【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】 投票結果

お待たせしました、【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】の投票結果発表です。

投票いただいた32名の皆様、誠にありがとうございました。


まずはお詫びから。投票対象一覧のリストにあった大山誠一郎『仮面幻双曲』ですが、本作は刊行が「2006/07」であり、投票対象外であることが確認されました。Amazonでは「2006/06」となっていたため誤認してしまったものです。本作は得票数29で8位に相当する支持を得ていました。投票くださった3名の方々、誠に申し訳ありませんでした。

また、リストになかったクリtォード・ウィッティング『同窓会にて死す』は「2006/01」刊行で投票対象となります。純粋なチェック漏れです、M.A様、申し訳ありません。ヒラリー・ウォー『ながい眠り』クレイグ・ライス『セントラル・パーク事件』については「翻訳者が全く違う新訳なので〜」とのご指摘がありましたが、この辺は個々人で判断が異なるでしょうし、今回は主催者権限で対象外とさせていただきます。M.A様、ご了承ください。

それでは、結果の発表です。まずはトップ10から。

■第1位〜第10位の結果

順位タイトル著者版元刊行日得票数
第1位 夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信 創元推理文庫 2006.04 90
第2位 怪盗グリフィン、絶体絶命 法月綸太郎 講談社ミステリーランド 2006.03 66
第3位 銃とチョコレート 乙一 講談社ミステリーランド 2006.05 63
第4位 ポワロック氏の事件簿 迷宮のレティーシア 大岩正幸 新風舎ことりのほんばこ 2006.06 61
第5位 骸の爪 道尾秀介 幻冬舎 2006.03 48
第6位 愚行録 貫井徳郎 東京創元社 2006.03 46
第7位 トーキョー・プリズン 柳広司 角川書店 2006.03 33
第8位乱鴉の島 有栖川有栖 新潮社 2006.06 29
第9位 贄の夜会 香納諒一 文藝春秋 2006.05 26
第9位 福家警部補の挨拶 大倉崇裕 創元クライム・クラブ 2006.06 26
第9位 チーム・バチスタの栄光 海堂尊 宝島社 2006.02 26
第9位 殺意は必ず三度ある 東川篤哉 実業之日本社 2006.05 26


第1四半期でトップだった『怪盗グリフィン、絶体絶命』を抑え、文庫書き下ろしの小市民シリーズ第二弾・『夏期限定トロピカルパフェ事件』が見事1位に輝きました! パチパチパチ!

■【どのミス2006 上半期編】総括



 第1四半期が17名、上半期が32名とほぼ投票者倍増となった今回の【どのミス】。圧倒的多数の支持を得て現段階(だって、通期はまた別にあるはずだから)での一位を獲得したのは米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』。”小市民シリーズ”の二作目にあたるこの作品、青春小説としての面白さに加え、本格ミステリとしても上々。文庫書き下ろしという気軽さも加えてか、第1四半期段階で二位にダブルスコアをつけてトップだった法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』を大差で引き離した。果たして、この勢いは通期で続くのだろうか? (新作『ボトルネック』の発表により票が割れる可能性も??) 


 怪盗を主人公とした正統派ジュヴナイル・法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』は今回一位こそ逃したものの安定した人気を維持。第1四半期の投票数は、この上半期のカウントと無関係であることを考えるとまさに”根強い”人気を感じさせる。そして第三位も初登場、『怪盗グリフィン』とはミステリー・ランド繋がりになる乙一『銃とチョコレート』。基本的に少年の冒険譚なのだが、ところどころのひねりが実に乙一らしく、そのレーベル通り「かつて子供だったあなたと少年少女」の両方が、世代を越えて楽しめる作品である。


 四位は大穴(?) 大岩正幸『ポワロック氏の事件簿 迷宮のレティーシア』。児童向けミステリの新刊ながら三位とも僅差。MYSCONに興味がある方々の一部には実は児童ミステリ愛好家が少なからずいるため、彼らの支持を集中的に集めたかたちとなった模様だ(※法月綸太郎の推薦帯も若干影響したかも? - MYSCON児童向け担当)。五位、道尾秀介『骸の爪』は、第1四半期でも投票対象だった作品だが、今回一気にベストテン圏内に食い込んできた。デビュー作品『背の眼』に続く心霊研究家・真備が探偵役となるシリーズ二作目。怪奇じみた雰囲気と緻密なロジックが光る、今年度の本格シーンを語るのに、まず外せない作品。


 六位は第1四半期でも三位だった貫井徳郎『愚行録』。著者はもちろん、東京創元社出版物で初の直木賞候補ともなった話題作だ。一家四人殺害事件をベースにその取材から浮かび上がる複雑な人間関係。ダークな雰囲気が不思議な吸引力を感じさせる。七位の柳広司『トーキョー・プリズン』も第1四半期の第10位から順位を上げての引き続きベストテン入り。終戦直後の巣鴨刑務所に収監されたある人物の所業を、ニュージーランド人が調査する、異色の本格ミステリ。これまた精緻なロジックが魅力で『骸の爪』同様、年末に向け、本格ミステリの側からのダークホース的存在になるはずだ。


 八位以下は、混戦模様で有栖川有栖久々の火村ものの長編『乱鴉の島』が僅かにリードも、後を香納諒一の本格警察小説『贄の夜会』、コロンボファンを狂喜させた大倉崇裕『福家警部補の挨拶』、世評も高い「このミス」大賞受賞作・海堂尊『チーム・バチスタの栄光』、そして東川篤哉のユーモア本格『殺意は必ず三度ある』がなどが追いすがる。


 さて現在もミステリの新刊は刊行ラッシュ状態(特に八月。オレを破産させる気なのか?)であることに加え、某誌上半期ベストテンで上位の『図書館戦争』『配達あかずきん』『鴨川ホルモー』『東京バンドワゴン』など”来ていない”作品が今後食い込んでくるのか。いやいや、今後も【どのミス】、目が離せませんねえ。(今回投票しなかった方も、次回はぜひどうぞ!)

フク@UNCHARTED SPACE





えっ、次回あるんですか!? ……それでは、14位以下のランキングです。

■第13位〜第20位の結果

順位タイトル著者版元刊行日得票数
第13位 紙魚家崩壊 九つの謎 北村薫 講談社 2006.03 25
第14位 気分は名探偵 ― 犯人当てアンソロジー アンソロジー(我孫子武丸ほか) 徳間文庫 2006.05 22
第15位 the TEAM 井上夢人 集英社 2006.01 21
第16位 東京バンドワゴン 小路幸也 集英社 2006.04 20
第17位 フォーチュン氏を呼べ ―ホームズのライヴァルたち H・C・ベイリー 論創社 2006.05 19
第17位 白菊 藤岡真 創元推理文庫 2006.03 19
第17位 終末のフール 伊坂幸太郎 集英社 2006.03 19
第20位 陽気なギャングの日常と襲撃 伊坂幸太郎 祥伝社ノン・ノベルス 2006.05 18


最後に、21位以下のランキングと、投票者一覧およびコメントです。海外作品は票が割れてしまったようですが、果たして下半期に本命とされる作品が登場するのでしょうか?


■第21位以下の結果
 21位/消えた探偵/秋月涼介/17
 21位/厭魅の如き憑くもの/三津田信三/17
 21位/いつもの朝に/今邑彩/17
 21位/証拠は眠る/オースティン・フリーマン/17
 25位/Op.ローズダスト(上・下)/福井晴敏/16
 25位/出口のない部屋/岸田るり子/16
 25位/川に死体のある風景/アンソロジー/16
 28位/εに誓って/森博嗣/15
 29位/ホームズ対フロイト/キース・オートリー/14
 30位/シートン(探偵)動物記/柳広司/12
 30位/びっくり館の殺人/綾辻行人/12
 30位/白薔薇と鎖/ポール・ドハティ/12
 33位/図書館戦争/有川浩/10
 33位/ぼくのメジャースプーン/辻村深月/10
 33位/狼と香辛料/支倉凍砂/10
 33位/アムネジア/稲生平太郎/10
 33位/少年は探偵を夢見る/芦辺拓/10
 33位/死のバースデイ/ラング・ルイス/10
 33位/グルメ探偵、特別料理を盗む/ピーター・キング/10
 33位/闇を見つめて/ジル・チャーチル/10
 33位/間違いの悲劇/エラリー・クイーン/10
 42位/ぶぶ漬け伝説の謎/北森鴻/9
 42位/第九の日/瀬名秀明/9
 42位/栄光なき凱旋(上・下)/真保裕一/9
 42位/七姫幻想/森谷明子/9
 42位/狼と香辛料2/支倉凍砂/9
 42位/カンニング少女/黒田研二/9
 42位/グリーン・ティーは裏切らない/ローラ・チャイルズ/9
 42位/同窓会にて死す/クリフォード・ウィッティング/9
 50位/配達あかずきん/大崎梢/8
 50位/文章探偵/草上仁/8
 50位/キス/西澤保彦/8
 50位/千里眼 背徳のシンデレラ(上・下)/松岡圭祐/8
 50位/一応の推定/広川純/8
 50位/ひよこはなぜ道を渡る/エリザベス・フェラーズ/8
 50位/ミステリ書店(1) 幽霊探偵からのメッセージ/アリス・キンバリー/8
 50位/マタニティ・ママは名探偵/アイレット・ウォールドマン/8
 58位/ストロベリーナイト/誉田哲也/7
 58位/深淵のガランス/北森鴻/7
 58位/狂い咲く薔薇を君に/竹本健治/7
 58位/三毛猫ホームズの危険な火遊び/赤川次郎/7
 58位/猫はバナナの皮をむく/リリアン・J・ブラウン/7
 58位/パズル・パレス/ダン・ブラウン/7
 64位/ストロベリーナイト/誉田哲也/6
 64位/帝都衛星軌道/島田荘司/6
 64位/セカイのスキマ/田代裕彦/6
 64位/トリックスターズD/久住四季/6
 64位/上手なミステリの書き方教えます/浦賀和宏/6
 64位/コーデックス/レヴ・グロスマン/6
 64位/青チョークの男/フレッド・ヴァルガス/6
 64位/蜂の巣にキス/ジョナサン・キャロル/6
 64位/アンティーク鑑定士は見やぶる/エミール・ジェンキンス/6

■投票者一覧(投票順)
北野章さん/「鳩時計」子さん:やぶにらみの鳩時計@はてな/がるさん/元さん:コンバンハチキンカレーヨ再/Pattiさん/あちゅこさん/はるかさん/わとそんさん/nakachuさん/みっつさん:未定の予定/グリークコフィンさん/杉本@むにゅ10号さん:*the long fish*/まるさん/そらけいさん:ヘリオテロリズム@はてな/ミスコン荒らしさん/カバチョさん/カエルさん/沖唯章さん:NO FICTION, NO LIFE/ようっぴさん/眠り猫さん:御託をもうひとつだけ/フクさん/INOさん:イノミス/atkさん:atkonthenetの日記/だんだん遅くさん/秋山真琴さん:雲上四季/夕時さん/ないとーさん:書店員のひとりごと/みゅうさん/FOOLさん:本読みの日常/仙術殻さん/近田鳶迩

■投票コメント
『銃とチョコレート』/ 敵味方のボーダーラインを曖昧にしたことで、展開に鋭さとキレが加わった。完璧にやられた。(がるさん)/ ストーリーテラーとしての才能がいかんなく発揮された作品(だんだん遅くさん)

『夏期限定トロピカルパフェ事件』/ 米澤作品で初めてミステリとしても秀逸な作品(だんだん遅くさん)

『ポワロック氏の事件簿 迷宮のレティーシア』/ 面白い!品のある挿絵がいい!安楽椅子探偵(ちょっと外には出るけど)ものの傑作だと思う。ファンタジーでありながら、あくまでも合理的な謎解きが素晴らしい。(カバチョさん)

『愚行録』/ 超弩級の後味の悪さを湛えた作品ですが、それが逆に、本書の持つ面白味を際立たせているようにも映りました。作中人物の愚行と、それを読みながら、心の中で小賢しい能書きを垂れる自分の愚行―、盛りだくさんな愚行に塗れていると、己の愚かしさを知る「犯人」が妙に立派に思えて来たり―。(眠り猫さん)

『贄の夜会』/ スケールの大きい力作。これだけのボリュームを一気に読ませる手腕に感心。(がるさん)/ サイコサスペンス・ハードボイルド・警察小説・社会派小説の要素に、叙情豊かな人間模様が織り込まれた、エンタメの総合商社的な彩りを持つミステリです。巨編に相応しい充足感と、そのページ数をも凌駕する面白さ・楽しさを満喫することができました。(眠り猫さん)

『紙魚家崩壊 九つの謎』/ 前半のかなり偏執的な論理が作品を支えるかなり前衛的なものから、幻想小説、さらにはラストに据えられたお伽噺の決まり事を皮肉ったり取り入れたりしながら愉快に論理が展開していく「新釈おとぎばなし」まで、様々な作者の技に触れられる一冊。(ようっぴさん)

『厭魅の如き憑くもの』/ 本格ミステリとホラーの融合、というより止揚。とにかく怪異に遭遇するときの場面の臨場感に圧倒された。(「鳩時計」子さん)

『いつもの朝に』/ 「人間ドラマ」と「人工的な物語としての作り込み」のバランスが絶妙。この作品で今邑彩のおもしろさを再発見したので、最近は未読だった作品を読んだり、すでに読んだ作品を再読したりしている。(そらけいさん) / 本屋大賞候補を強く希望(だんだん遅くさん)

『証拠は眠る』/ トリックなんかは実に古臭いものですが、それに対峙するのが「科学者探偵」ソーンダイク博士なので、実にピッタリの事件内容になっています。(ようっぴさん)

『シートン(探偵)動物記』/ 子どもに読ませたい本格。あと、稲見一良の愛読者にも。(「鳩時計」子さん)

『白薔薇と鎖』/ 伏線の回収作業が面白かった。最初はやや読みにくかったが、中盤以降は語り口に慣れてぐんぐん読めた。(ようっぴさん)

『出口のない部屋』/ トリックにはやや無理が生じたと思うものの、登場人物全員が嫌な人物に思えるねちねちした描写が成功していて、読んでる間中むかむかしたものを感じ続けた。ここまで徹底できるというのは凄い。(ようっぴさん)

『ぼくのメジャースプーン』/ この物語の謎を解く鍵は、「ぼく」とふみちゃんの心の襞の中に隠されています。稀代の名探偵が雁首揃えて、「参りました」とうな垂れそうな傑作ミステリだと思いましたが、本書を心底楽しめるのは、「謎」や「意外な結末」よりも、人間ドラマを堪能したい皆さんなのかもしれません。(眠り猫さん)

『七姫幻想』/ “情念”をモチーフにしながら、十分に洗練された本格ミステリ。(「鳩時計」子さん)

『狼と香辛料』『狼と香辛料2』/ ライトノベルながら、今年上半期で最もエポックメイキングなシリーズ。(夕時さん)

『少年は探偵を夢見る』/ これほどハイレベルの短篇連作集はなかなかないと思います。特に「少年探偵はキネオラマの夢を見る」の暖かくも懐かしい雰囲気が好きです。いい意味で稚気もあります。(ようっぴさん)

『アムネジア』/ 読み終えて一週間と経たずに再読した。おもしろいけど、わからない。わからないから、おもしろい。傑作。(そらけいさん)

『文章探偵』/ この小説をよんでいること自体、迷宮感覚に襲われる。まさに“倒錯のロンド”。(「鳩時計」子さん)

『一応の推定』/ 全体的に地味で仄暗い印象があるのだが、なぜかページを繰る手が止まらなかった。(がるさん)

『深淵のガランス』/ 探偵役の情念の深さと、緊密なプロット展開で、とにかく読ませる。(「鳩時計」子さん)

『パズル・パレス』/ “デジタル仕様のシドニィ・シェルダン”という感じ。文章やキャラの上手い下手ではなく、展開の妙で読ませるタイプ。(がるさん)

『コーデックス』/ 私はミステリ以上に、本そのものが好きなんだなあと実感させられた。(がるさん)



以上、どのミスでしたッ!

近田鳶迩@The Neverending Mystery BLOG

myscon on 2006/8/22 - 12:40:41 in ネット企画

2 Responses to “【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】 投票結果”

  1. Gotaku*Log responded on 2006/08/28 at 14:46:56 #

    【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】 投票結果

    MYSCON企画、【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】の投票結果が出ました。【どのミステリーがすごい!? 2006年上半期編】 投票結果1位:夏期…

  2. MYSCON - The Mystery Convention responded on 2007/02/28 at 0:18:49 #

    【どのミステリーがすごい!? 2006年第1四半期】 投票結…

    お待たせしました、【どのミステリーがすごい!? 2006年第1四半期編】の投票結果発表です。
    投票者の皆様、ありがとうございました。

    投票期間が短く、また対象作品を読 (more…)

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